TOP > story > シミズの人 > 1分1秒を争う現場を支える鍵はチームワーク

京都市西京区にあるシミズ病院は、グループの中核施設でSCU(脳卒中ケアユニット)を18床設け、脳神経外科を中心に24時間365日体制で救急や緊急手術に対応しています。地域の皆さまからは「脳神経外科ならシミズ病院」と厚い信頼と期待を寄せていただいており、高度で質の高い医療を提供しています。

救急搬送の第一報と同時に、全職種が連携スタート

1秒も無駄にせず、全員で治療体制を整える

垣田:急性期の脳神経疾患は、発症から治療・手術開始までの時間をいかに短縮するかが重要です。なぜなら、時間の経過とともに脳へのダメージが増大し、後遺症のリスクや命の危険が高まるからです。当院では救急搬送の連絡があれば、ただちに医師が看護師をはじめ関連部署と情報を共有し、各セクションで受け入れ態勢を整え、病院到着から速やかに処置を行えるようにしています。

例えば、救急搬送の段階で、患者さまに脳卒中の兆候が見られる際には、脳神経外科の医師にも連絡が入ります。これは脳梗塞だ、血栓回収が必要だ、などと診断できたらすぐ手術に入れるようスタッフ全員が一斉に受け入れ態勢に入ります。

原辺:救急外来では、病院到着の瞬間から時間をカウントして、手術までに何分、ということを全スタッフが意識して動いています。

術後の患者を受け入れることになるSCUの看護師も、救急外来到着時から2~3人は立ち会います。受け入れ後の検査中も医師や看護師などがそれぞれモニターを確認し、診断がついたらすぐに次の動きが取れるよう連携しています。

垣田:医師同士も連携して動いています。救急外来の担当医が採血や診察を行って、手術が必要ならご家族に説明を行います。併行して私たち手術担当医は、同意が得られたらすぐに執刀できるよう準備に入ります。ただ、1分1秒でも早く治療を開始するには、医師だけの努力ではできません。看護師をはじめコメディカルのチーム全員が、最良の方法を考えて動いているからこそ実現できるのです。

原辺:手術が始まったら、病棟の看護師は術後の受け入れ態勢を整えます。病床運用や使用する機器の準備など、個々の患者さまの症状や診断に合わせてスムーズに受け入れできるよう看護師がリーダーシップをとって進めていきます。

垣田:こうしたスピーディーな対応ができるのは、脳神経外科に特化した当院ならではの特長ですね。一次脳卒中センターコア施設(日本脳卒中学会認定)であるシミズ病院では、直接救急搬送される方、他院では処置の難しい方など、急性期の脳神経疾患の患者さまを24時間365日受け入れて治療を行っています。

また、医師・看護師・リハビリスタッフ・MSW(医療ソーシャルワーカー)たちは、入院時から、常に退院を見据えてカンファレンスを行っています。一人ひとりの患者さまやご家族にとっての最善のゴールを模索し、そのゴールに向けて治療・看護にあたっています。

シミズ病院グループは、超急性期から急性期、回復期、在宅まで安心して継続的にケアを受けていただける病院・施設・介護事業所が揃っていることが強みです。

チームワークとコミュニケーションが一番大事

小さな変化も見逃さず、異変や気になる症状には迅速に対応

原辺:SCUでは一般病棟とは異なり、1日7回、患者さまの状態観察をNIHSS(脳卒中神経学的重症度評価スケール)を用いて、かなりこまめに行います。脳神経疾患の患者さまは、術後すぐにはご自分で自身の身体の状態を伝えることは難しく、急変や合併症などに備える必要があります。常に緊張感を持ち、どんな小さな変化も見逃さないよう観察し、異変や気になる症状があればすぐ医師に報告しています。

垣田: 医師は手術対応などもあり、すべての患者さまを同時にリアルタイムでチェックするのは難しく、経験豊富な看護師との連携はとても重要です。報告をもとに検査や処置を適切に行えることも多く、厚い信頼関係でチームが成り立っているなと感じますね。

原辺:医師はSCUに常駐しているので距離感も近いですし、なんでも相談しやすい雰囲気があります。患者さまのことだけでなく、時には何気ない日常の話をすることもあります。現場には緊張感が漂っていますが、チームワークよく楽しく仕事していますし、どのスタッフも医師にいろいろなことを言いやすい環境を整えていただいていると感じています。

垣田:SCUでは、チームワークとコミュニケーションがとても大切です。スタッフ全員のことをとても信頼しているし、私自身も信頼してもらえるよう普段から心掛けています。

患者さまの目指すゴールに向かって、寄り添いながらケアを行う

原辺:SCUでは、術後1日目で状態が不安定であっても、早期リハビリテーションを始めます。身体状況が落ち着いてからでは、関節が固まってしまう可能性もあるので、常に退院やその後の生活を見据えて治療を進めます。

その際、精神的・身体的苦痛が伴わないように工夫しながら、患者さま一人ひとりのご希望やご家族の意向をじっくりお伺いして、機能回復のゴールを決めていきます。身体の状態も、目指すゴールも個々に異なりますので、患者さまの残存能力を最大限引き出せるよう看護ケアに取り組んでいます。

現在、私は一般病床と地域包括ケア病床のケアミックス型病棟にいますが、日々の看護の中で、SCUでの看護を経験したからこそできることがあると実感しています。後輩の中にはSCUでの看護未経験者もいるので、急性期の対応や脳神経外科の患者さまについて特に観察すべきこと・注意すべきことについて指導や助言を行っています。

垣田:原辺さんのようにSCUを経験した看護師がいてくれると、患者さまの引き継ぎもスムーズに行えるし、コミュニケーションもとりやすいので助かります。

原辺:私自身、急性期医療に看護師としてかかわることがとても好きでやりがいを感じています。これからも、SCUから一般病棟や他院への転院、回復期リハビリテーション病院を経ていずれ自宅へ戻るといった目標に向かってリハビリテーションに励む患者さまやご家族に寄り添い、一緒にゴールを目指していきたいと考えています。

脳神経外科部長・脳卒中センター長

垣田 寛人

(プロフィール)

2003年兵庫医科大学医学部卒。同大学病院脳神経外科に入局し、数年勤務。その後、他院での勤務を経て、2018年兵庫医科大学勤務に戻り、博士号取得。2019年からシミズ病院脳神経外科勤務。

(資格・経歴)

日本脳神経外科学会専門医・指導医

日本脳神経血管内治療学会専門医

日本脳卒中学会専門医

医学博士

一般病棟・看護師長

原辺 歩